夢2

穴のクマ牧場という仮想の世界を、おれとおれの後ろを囲うように立つ5人が見ている。場面は夕方の橋の上で、人を殴れるほど分厚い本を持った男が立っているところから始まる。おれ以外の観客が驚くのに合わせて、光景が移り変わる。それを何度か繰り返すうちに、男の様子が能動的になってくる。男が本を開くたびに様子がおかしなことになっていく。

たとえば、男が頁をめくって”生き馬の目を抜く”を開くと、公道を歩いている馬が倒れる。”帳尻合わせ”を開くと地平線から新たな馬が歩いてくる。辞書のようだが判読不可の表現があり、世界を見る側から判読できたのは男の指示のうちの半分ほどで、ところどころ謎の指示を挟み、橋の上下で季節が半年ずれる、川を挟んだ向こうのビルがゼラチン質のように揺れると、光景がカオスになっていく。

男は最初おれに価値観をすり寄せたように本を使っていたように感じたが、そこからエスカレートしていく。欄干に足を引っかけて靴ひもを結ぶ人に対して剣道の”小手”の頁を開くと、靴に三本の爪痕が入る。それをきっかけに指示の内容がこちらに伝わらなくなってくる。ピアノ線が水面に触れるまで伸びたところで、男は辞書の最後の頁に達する。ペンを取り出して左右対称で策、棗に近い漢字を書きなぐってこちらに見せつけたところで終了する。おれ以外がそのシーンを見てスバルくん!?と叫んで爆笑したあと、おれを安楽椅子から解放する。